プロダクション・ノート

■脚本執筆

大庭が執筆に着手したのは、助監督として携わった『シン・ゴジラ』の撮影を終えた2015年11月。撮影後に時間の余裕が出来、「シナリオでも書こうか」と喫茶店でボンヤリとしていた時、不意にあるイメージが頭に思い浮かんだ。それは、一人の男が海の埠頭にて、今は亡き妻の亡霊と再会し、むせび泣いているイメージ。そのイメージが、どういうわけか頭にこびり付き、「この男を書いてみたい」と思ったのが執筆の端緒である。そこから、大庭が好きなオディロン・ルドン作の『キュクロプス』に物語のインスピレーションを得つつ、また、日々の生活の中で大量に押し寄せて来る情報が自身の中で飽和し、何を信ずるべきか分からなくなる時に感じる不安感、焦燥感、その中で、果たして我々は一体何を信じて生きていくべきなのか?といったテーマを、シナリオの中に落とし込みながら執筆は進んだ。

 

■プリ・プロダクション

映画を作るのにはお金がかかる。もし撮るとするなら、自身の貯金を全て投じる覚悟が必要で、大庭はたじろいだ。たが、シナリオを読んだプロデュース・石塚と財前役・杉山に「これは是非撮ろう」と後押しを受け、大庭は製作を決意した。参加したスタッフは、そのほとんどが大庭が現場で一緒に仕事をしてきた人たちである。大庭の依頼を快諾し、無償で撮影に参加した。彼らが、商業の撮影現場と変わらない、若しくはそれ以上の妥協なき姿勢で臨んだそのプライドが、映画をさらに力強いものにしている。

キャスティングは、大庭が撮影現場で目をつけていた俳優らに声がかけられた。商業映画の撮影現場には、決して名は知られていないものの時にはメインの俳優を食い倒さんばかりの存在感を発する俳優がいる。そんな俳優たちを起用した。主役の篠原を演じた池内は、大庭とは面識が無かったが、「若き日のクリストファー・ウォーケンみたい」と池内に注目していた大庭が一本釣りで体当たりオファー。池内は快諾した。

 

■撮影

2017年3月30日にホテルのシーンからクランクイン。撮影地は、主に千葉の木更津から館山が選ばれた。撮影日は10日間。何かちょっとした綻びで破綻しかねないタフなスケジュールだったが、スタッフ・キャストは粘り強く撮影に臨み、これを克服。商業の現場で雨男として知られる大庭は、今回も雨に祟られた。雨で中止する余裕は無いので、雨設定で撮る。冒頭の数シーンで、交互に雨が降ったり晴れたりしているのはそのせい。だが、「ショットは繋げば繋がるもの」を信条とする大庭は、雨が降った時には「雨フラシ代が儲かった」と喜んでいたという。インしてから2〜3日間の間は、芝居に関して大庭と俳優が意見を交わすことが多かったが、それ以降はほぼ俳優任せ。信頼して任せられる俳優をキャスティングした事は、現場でかかる時間やストレスを大きく軽減させるという副産物をも生み出した。2017年4月11日、刑務所のシーンを撮り終えてクランクアップ。こぼした小物撮影は、後日大庭の自宅で撮影した。製作にかかった金額は総額で650万円。大庭の450万円の貯金はゼロになり、不足分は泣く泣く福岡の両親に借りた。

 

 ■仕上げ〜映画祭出品

撮影後、約1年をかけて仕上げは行われた。日銭を稼ぐための仕事をしながら仕上げを進めていく必要があったので、その分時間がかかったのである。音楽として携わった永島友美子は、大庭の前作『ノラ』にも参加している福岡在住の作曲家。彼女独特の、情緒が淡く滲むようなピアノ主体の楽曲が、ショットに潜んでいた情緒を浮き立たせ、作品にさらなる奥行きを与えている。2018年1月に完成後、各映画祭にエントリーし、メインコンペ部門に選出された「ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2018」が初上映となった。初上映後、「これは自主製作の域を超えている」「先の読めない展開に釘付けになった」「すぐに劇場公開するべき」などと高評価が相次ぎ、その評価は、同年行われたSKIPシティ国際Dシネマ映画祭、ドイツの日本映画祭ニッポン・コネクションなどの上映に於いても引き継がれていくこととなる。

 映画「キュクロプス」公式サイト 5月3日(金)上映開始

お問い合わせ:theghost3216@cyclopsfilm.com

2018/日本/カラー/シネマスコープ/ドルビーデジタル5.1ch/108分

配給・宣伝:アルミード

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